私は週に1回、中国語教室に通っています。
にもかかわらず中国語力が全然上達しないことはいいとして、今日はその授業で使っているテキストについて紹介してみたいと思います。
『私達の中国語教室』というタイトルのテキストです。
中国語・英語・日本語が併記されていて、英語国民向けのテキストと日本人向けのテキストを兼ねているというなかなか効率的な作り。
ですが、たまに日本語訳がおかしかったりすることもあります。
この「デートする」という章を期待して読んだところ、中身は単に仕事での面会の取り決めをするものでした。
中国語の「約会」には「会う約束をする」「デートする」の2つの意味があるから誤訳したみたいです。
テキストの中身にはそれほど物珍しいことはなくて、各章には「自己紹介する」「道を尋ねる」「買い物に行く」といった生活の場面のタイトルが付けられ、それについての会話を読みながら、新しい文法や単語をマスターするという感じです。
例えば「自己紹介する」という章。
マリーが「私の名前はマリーです。私はアメリカ人です」と言い、ジェイクが「私の名前はジェイクです。私もアメリカ人です」と言っています。
これらの会話を通じて、自分の名前を言う時の表現や「〇〇は〇〇です」「〇〇も〇〇です」という表現を学びます。
まぁ普通ですよね。
ですが、時々、題材となる会話の所々に「日本で日本語のテキストを作るとしたら、こういう内容にはならないだろうなぁ」という部分があり、中国の世相を感じさせます。
例えば、「修理を依頼する」という章。
まずは修理に関する会話にわざわざ一章を割いているということに、中国ではいかに修理を依頼する機会が多いかがよく表れています(詳しくは『故障と修理』をご参照下さい)。
ジェイクの家のガスの湯沸かし器が壊れてしまい、ガス会社に電話しています。
ちなみに中国では一台の湯沸かし器に家中の全ての温水器が繋がっており、湯沸かし器が壊れるとシャワーやウォシュレットも温水が出ないという困ったことになります(私も経験済み)。
そして、ジェイクが受付嬢に告げた内容を読んでびっくり。
彼は「温水が出ない。先週既に一度修理して貰ったのに、昨日また壊れた」と言っているのです。
なんか例文としてはいきなり複雑な状況説明のような気がするのですが、実際、修理したばかりなのにまた壊れるということがよくあるのだから困ります(笑)
このテキストはひとつの章に2つの会話文が載っているという形式なのですが、「修理する」の章の2つ目の会話分も、なかなか悲惨な故障状況です。
張さんは賃貸アパートの大家さん、王さんは間借り人という設定。
張さんが王さんに契約を更新するかどうか尋ねているのですが、王さんは「家賃が高くて部屋が古く、家電製品もいつも壊れる。例えばテレビは去年からもう4回も修理している」と言っています。
『中国のアパート事情』で紹介しましたように、中国では大家さんとは建物全体の持ち主ではなく、分譲マンションの一部屋を購入した個人。その個人が家具や家電製品を揃えた上で賃貸に出します。従って、家電製品の修理は大家さんの仕事。間借り人が大家さんに修理を依頼する機会がとても多いです。
王さんの不満はその後も続きます。
冷蔵庫が壊れていて食べ物がみんな腐ってしまい、エアコンも壊れていて暑くて死にそうなのだそうです。
王さんの住まいの家電製品があまりにもしょっちゅう壊れることにも驚きますが、王さんが大家さんに対してたくさんの苦情をずけずけと言っているところにも、日本と中国の世相の違いを感じますね。
次は「クリーニング店」という章。
店員が「いらっしゃいませ」と言うから、てっきりクリーニングを頼む会話かと思ったのですが、ジェーンさんは店員に対し「先日戻ってきたこの上着だけど、全然汚れが取れてないじゃない」といきなりのクレーム。
店員は「すみません。無料でもう一度洗います」と答えています。
こういうクレームの言い方をまず覚えないといけないのかなぁ?
こちらは「就職する」という章。
アメリカ系企業からヘッドハンティングを受けて転職した人の話なのですが、彼の自慢振りがすごいです。
給料は上がり、社有車による送迎付きになり、年に一度アメリカやヨーロッパに研修旅行に行けることを読者に自慢しまくってます。
しまいには「俺は今や金領だ!」とまで言い出す始末。
「金領」というのは造語で、語彙の少ない辞書には載っていない言葉。
英語の「ホワイトカラー、ブルーカラー」を中国語で「白領、藍領」と言うのですが、それを応用して襟の色を金色にしたわけです。
日本語で言うと「エグゼクティブ」みたいなイメージでしょうか。
辞書に載ってない言葉まで使って自慢されてもなぁと引いてしまいます。
ところで、この人の自慢の就職先がアメリカ企業であることに注目して下さい。
中国では(最近だいぶ薄れたとは言え)まともな就職...