言うまでもなく、日本語の漢字は中国から輸入されたものです。
ですから、元々は中国語も日本語も単語の意味は同じだったはずです。
実際、現代でも「上」「下」「男」「女」などの基本的な単語は、日本でも中国でも同じ意味で使われています。
一方で、長い年月を経て、中国または日本で意味が変化したり、あるいは中国または日本で新たな単語が発明されたりして、日本と中国で(字体はともかくとして)字が同じなのに意味が違う言葉もあります。
それらの中には、中国語の単語を見せられても、日本語には存在しない言葉なので意味がわからないものもありますが、一方で、日本語にもその言葉は存在するけど意味が違うというものが結構あります。
今日はそれらの中から僕が面白いと思ったものを紹介したいと思います。
尚、下記の文章では中国語を赤字で示しています。
まずは「放置(ファンジ)」という言葉。
日本語ではこれは「ほったらかしにしておく」というような意味で、あまり良い印象の言葉ではありません。
ところが、中国ではそういう意味ではなく、単に「置く」という意味です。
「放」だけでも「置く」という意味になります。
僕の勤め先の工場には、「原材料放置処」というような看板がよく貼ってあります。
日本人の感覚だと、「大事な原材料を放置するなよ」と思ってしまいますが、これは正しい置き場にきちんと置くことを意味しているのです。
ところで、日本語の「放置プレイ」は中国語では何と言うのでしょうか?(笑)
次に「停車(ティンチャ)」という言葉。
日本語と同じく、車を一時的に止める時にも使う言葉ではあるのですが、中国語では駐車と停車の区別がなくてどちらも「停車」です。
ですから、ショッピングセンターに行くとよく「停車場」という看板を見かけます。
もちろん駐車場のことなのですが、日本語で「停車場」と言うと駅やバス停を指す昔の言葉なので、石川啄木の「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」という詩を思い出して望郷の念に駆られちゃったりするのです(笑)
次は「告訴(ガオスー)」という言葉。
日本語では裁判用語としてしか用いませんが、中国語では日常会話でしょっちゅう耳にする言葉です。
中国語の「告訴」は「告げる。伝える。教える」という意味。英語の「tell」にあたる言葉です。
例えば、ディズニーランドに初めて行く人が、既に行ったことのある人に「どのアトラクションがオススメか教えて」なんていう場面でよく使います。
「私に教えてね」(告訴我)という軽い命令文で使うことが多い関係上、まるで「俺を告訴しろ」と言ってるみたいな気がしてしまいます。
次は「情報(チンバオ)」という言葉。
現代は情報社会ですから、日本語では「情報」という単語をよく使いますが、中国語では日常会話でこの単語が出て来ることは滅多にありません。
なんでかと言うと、この単語は中国語では主として「諜報」という意味で使われるからです。
じゃあ、「情報」のことを中国語で何と言うかというと、「資訊」「資料」「信息」といった単語があります。
次は「経理(ジンリ)」という言葉。
日本でも中国でもこの単語はビジネスの場面でよく使いますが、全く別の意味です。
日本語の「経理」は言うまでもなく、会社のお金の出入りを記録・管理する業務・部署のことを指しますが、中国語の「経理」は「マネジメント」「マネージャー(管理職)」という意味なのです。
中国のビジネスマンと名刺交換をすると、名刺に「経理」と書いてある人がたくさんいて、僕は最初の頃、「なんで経理部の人ばかりと知り合うのだろう?」と思っていたのですが、彼らは経理部に所属しているわけではなく、日本で言うと部長や課長にあたる役職だということです。
ちなみに、社長のことは「経理(管理職)の中のトップに位置する人」という意味で「総経理」と呼びます。
次は「妻子(チーズ)」という言葉。
日本語では「妻と子」という意味ですが、中国語では「妻」だけを指します。
「子」という単語には「子供」という意味もあるのですが、ここではそういう意味ではなく、調子を整える目的で名詞の末尾につける接尾辞であり、特に意味はありません。
中国では「靴」のことを「鞋子(シエズ)」、「袋」のことを「袋子(ダイズ)」、「机」のことを「?子(ジュアンズ)」という具合に、多くの名詞に意味のない「子」が付いています。
この名残が日本語にも残っているのが「帽子」で、この単語は日本語でも中国語でも同じです。
では、中国語で「妻と子」と言いたい時は何と言えばいいかと言うと、「妻儿(チーアール)」という単語があります。
「儿」も「子供」という意味で、息子のことを「儿子(アールズ)」、娘のことを「女儿(ニューアール)」と言います。