2024/02/26 中国新聞
中国残留邦人3世の広野夏帆さん(29)=広島市安佐南区=が25日、西区で講演した。帰国後、言葉や文化の壁に阻まれた残留邦人の苦労を伝え、「異文化を背景に持つ人が、同じ場に当たり前にいるという感覚を持ってほしい」と訴えた。
市内で生まれ育った広野さんは、父方の祖母が中国残留孤児。1986年、高校生の父を含む一家で帰国したが、働き口が定まらず苦労したという。小学校教諭の広野さんは自らが勤め始めた当時を振り返り、「子どもや保護者にどう捉えられるか不安で、自分のルーツを話せなかった」と明かした。
広野さんは昨年5月に長女を出産。入院先で、日本語の読み書きができず困っていた在日外国人の患者に触れて「いるのに、いないように扱われる感覚だろう」と思いやった。病院の説明資料の多言語化などの配慮を求め、「誰もが適切な福祉を受けられる環境をつくるため、マジョリティー(多数者)こそが声を上げたい」と呼びかけた。
講演会はNPO法人共生フォーラムひろしま(西区)が主催し、20人が参加した。(川上裕)
【写真説明】多文化共生の必要性について語る広野さん