メイソウのうたい文句は「日本のトレンディーレジャーブランド」
どこの店舗でも周辺の店舗に比べて利用者が多い
「メイソウ(名創優品)」というショップ中国全土でブレイクしている。店内はユニクロと無印良品とダイソーを足して3で割ったような雰囲気で、奇妙な日本語の商品説明が付いているのが特徴だ。
なんちゃって日本ブランドが中国全土を席巻!
メイソウというショップをご存じだろうか。英語では「MINISOU」、中国語では「名創優品」であり、当然ながら中国では中国語で呼ばれている。
メイソウのロゴや店舗の雰囲気は、ユニクロのようであり、ダイソーのようでもある。売られている商品は無印良品のようでもあり、ダイソーっぽくもある謎のショップだ。
日本からやって来たとうたっているにもかかわらず、おかしな日本語の説明が付いた商品ばかり。それでもだいぶ改善されてきており、以前はもっとひどかった。日本語が分かる中国人は少数派のため、多くの中国人客は「日本語が書いてある」と思うだけで特に違和感は覚えない。つまり、メイソウは「日本製品を扱っている店」として中国の大衆に認識されているわけだ。
最初にメイソウが確認されたのは、広東省の広州や深センだった。広州でブレイクしたときは、本家とも言えるダイソーをもしのぐ人気ぶり。そして気が付けば、上海の目抜き通りや、北京の天安門広場近くの前門エリアをはじめ、中国の省都レベルの都市に続々と出店していた。2014年には全国373店舗に達したとのことで、2015年は1000店舗を目標にしているという。
日本人から見たら“うさんくさい”ブランドが、中国人にとって最も身近なブランドになりつつある。今までも日本語表示がおかしいブランドはいろいろと登場したが、ここまでの規模に成長したブランドはなかった。
ネットショッピングがすっかり普及し、ショッピングセンターが郊外に乱立する中、集客力の高いメイソウは、都市部の商店街の救世主的な存在になっている。
湖北省武漢の歩行者天国「江漢路」の店舗。地下鉄駅出口目の前だ
雲南省昆明の人気ショッピングセンター「南亜風情園」の店舗
メイソウに似たコンセプトの店舗では、「一伍一拾」という100円均一ショップのチェーン店があるが、一伍一拾はメイソウほどブレイクしたとは言い難い。中国には日本のダイソーも進出しているので、日本人が利用するならダイソーのほうが安心感があるとはいえ、なぜダイソーや一伍一拾などよりも中国人のハートに刺さったのだろうか。
メイソウで販売されている商品は10元(200円弱)のものがメインだが、より高額な商品もある。中国の一般的なショップに比べると、価格の割には質が高く、面白い商品がそろっているように思う。
10元あれば店で炒飯を食べられるので、日本人がイメージする100円ショップの感覚よりはかなり高い。しかし、インフレが進んでいる中国にあっては、10元でこの品質の製品が買えるのは「かなり安い」と思えるレベルなのだ。
カラーバリエーションをそろえるという商品展開は、中国ではユニクロ以外なかった
メイソウが扱う商品は化粧品や香水から、布製品、日用品に至るまで幅広いが、どの製品のパッケージも、ある程度デザインが統一されている。商品によってデザインがバラバラな一伍一拾などに比べると、ショップが商品をきちんと管理しているという安心感を与える効果があるように思う。
そして何よりも店舗の立地がものすごくいい。高級デパートでもショッピングセンターでもなく、いかにもメイソウの商品を気に入りそうな客が集まる歩行者天国の近くに店舗があったりするのだ。同じロケーションにダイソーがあれば、今ごろはダイソーが大人気になっていたに違いない。
勢いに乗るメイソウは今後、中国の中小地方都市まで手を広げ、“日本ぽい文化”を広めていくような気がしている。
中国的有名税とでも言うべきか、メイソウによく似たショップも登場し始めた
メイソウっぽいショップは、ハングル文字のものが多い。店のつくりにメイソウほどのこだわりはない
著者
山谷剛史(やまや たけし)
海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国専門ITライターに。連載に「山谷剛史のアジアン・アイティー」、「山谷剛史のチャイナネット事件簿」、「華流ITマーケットウォッチ」など。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)など。最新刊は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書) 」。