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| | | 中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。
| | | 2024-01-01 07:24:49
君主号と歴史世界 (史学会シンポジウム叢書)の感想 第6章のセルジューク朝のバグダード入城に伴うスルターン号承認の虚実、第8章の、元来国制的な裏付けや職権の付与を伴わなかったアウグストゥス号の位置づけと歴史的展開に関する議論を面白く読んだ。第10章のハプスブルク帝国の複合的君主号や第11章の護国卿の位置づけに関する議論を読むと、日本の征夷大将軍についても君主号と位置づけるような議論があっても良かったのではないかと思う。 読了日:12月02日 著者:
海外の日本中世史研究: 「日本史」・自国史・外国史の交差の感想 日本中世史の外国籍研究者、在外研究の経験がある日本人研究者、日本で外国史を研究する研究者の三者それぞれの立場からの研究動向+外国籍研究者による著書の書評という構成。韓国では韓国史との接点が弱い中世史の研究者が困難に直面しているなど、それぞれの国での研究事情や研究の特質が興味深い。それと同時に、日本人の日本史研究者が海外で研究する意義も理解できるような記述になっている。『新ケンブリッジヒストリーオブジャパン』で、すべての章で出来る限りジェンダー概念を取り入れているというのは、日本の学界も重く見るべきである。 読了日:12月05日 著者:
仇討ちはいかに禁止されたか? 「日本最後の仇討ち」の実像 (星海社新書)の感想 「もうひとつの忠臣蔵」とも言うべき、幕末の赤穂志士によって引き起こされた高野の仇討ち。幕末とあって、土佐や長州、京都の公家などが関係してくるというのが面白いところ。仇討ちのきっかけとなった村上真輔の殺害にも尊皇攘夷が関係してくる。これが明治六年の仇討ち禁止令の制定につながったということで、制定に至るまでどういう議論があったのかなど社会史的なアプローチを期待したが、そこが詳しく紹介されているわけでもなく、タイトルが看板倒れになっている感があるのが残念。 読了日:12月07日 著者:濱田 浩一郎
パッキパキ北京の感想 女版阿Qとも言うべき楽天的な菖蒲の北京生活。とにかく痛快で笑いたくなってくる。コロナ禍のもとでの中国事情も読みどころ。(コロナ以前からのものであるが)交通事情や住宅修繕のおじさんの発想など、中国で暮らした経験のある人には頷くポイントが多いのではないかと思う。綿矢先生のファンだけでなく中国に興味・関心のある人も是非読んで感想、特にラストの主人公のを語りあいたい。『すばる』掲載版から、王一博の広告など細かい加筆がなされている。 読了日:12月08日 著者:綿矢 りさ
古代人の一生──老若男女の暮らしと生業 (シリーズ 古代史をひらく?)の感想 各章で興味深かったポイントを書いておくと、吉村論文では夫だけでなく妻や子の戦争参加について言及されている。菱田論文では、ジェンダーの観点から『土偶を読む』とその批判本『土偶を読むを読む』について触れている。吉川論文では古代の女官の役割について、日本では宦官が存在しないということと関係している部分があるという。鉄野論文では、万葉集に見られる個々人の男女関係について、基本的には虚構であり、歌に見える表現と現実との関係を勘定に入れる必要があるという。巻末の対談では学界のジェンダー事情について触れられている。 読了日:12月11日 著者:
風水講義 (法蔵館文庫)の感想 今まで風水の解説書を読んでもよくわからなかったが、本書は、風水の基本的な発想は大地を人体に見立てることであるとか、儒学との結びつき、そして朱子が風水に理解があったことにより近世以降風水が広まることになった等々、要点を押さえてくれている(しかしそれでもまだ飲み込めない所が多々あるが……)前近代中国での広まりのほか、現代中国、朝鮮半島や沖縄の状況についても触れている。文庫版で追加された付篇も本編のよいまとめ、補足となっている。 読了日:12月14日 著者:三浦 國雄
台湾の歴史 (講談社学術文庫)の感想 多重族群国家としての台湾、あるいは中華民国第二共和制の成立に重点を置いて辿る台湾現代史。二・二八事件から陳水扁政権成立までを中心とし、日本統治時代以前については記述が控えめ。文化史についての言及もほとんどなく、あくまで政治史・経済史が中心。台湾史について断片的な知識しかなかったのが、通史として見ることで点と点が線でつながったという感じになった。 読了日:12月16日 著者:若林 正丈
台湾の半世紀 ――民主化と台湾化の現場 (筑摩選書 269)の感想 台湾政治研究の泰斗による、半世紀にわたる研究と「選挙見物」などの現地滞在記。同時刊行の同じ著者の『台湾の歴史』の舞台裏のような内容。そして同書の後の政治状況も補足としてまとめられている。著者の研究生活はほぼ台湾の民主化、あるいは「中華民国台湾化」、更には日本で台湾に対する印象が変化していく過程と重なっており、ダイナミックである。政治研究者としては当たり前だが、後々政界の大物となる人物とも早くから接触している。台湾政治研究を語る言葉として「動いているものは面白い」というのが印象に残った。 読了日:12月19日 著者:若林 正丈
台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史 (文春新書 1434)の感想 内容的に若林正丈『台湾の歴史』『台湾の半世紀』とかぶる部分も多い。本書の特徴は、劉彩品ら活動家の事績や言動を多く取り上げている点、批判されがちな馬英九の政治的スタンスや施策に一定の評価を与えている点などだろうか。その他PCゲーム『返校』をめぐる議論や八田与一をめぐる日台の認識のズレなども取り上げている。 読了日:12月20日 著者:家永 真幸
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