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| | | 中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。
| | | 2024-03-01 08:23:57
カーストとは何か-インド「不可触民」の実像 (中公新書 2787)の感想 カーストの歴史的な展開についての本かと思いきや、それは第1章のみでメインは不可触民の置かれた現状の話。フィールドワークによる実感やインタビューによる個別事例、映画での描写なども盛り込まれていて具体的な状況が想像しやすいようになっている。元々はそれほど厳密というわけでもなかったカーストが顕在化・実体化したのはイギリスによる植民地統治がきっかけだったというのが意外。不可触民の置かれた状況を見ると、日本の部落問題に対しても示唆する所が多そうである。 読了日:02月01日 著者:鈴木 真弥
ヨーロッパ史 拡大と統合の力学 (岩波新書 新赤版 2003)の感想 英仏独などの各国史ではなくヨーロッパ世界を一体のものとして見るヨーロッパ史……だと思う。古代末期から中世にかけての大帝の時代の部分が私にとっての読みどころだった。著者の専門柄「ビザンツ」に関する話が多いが、西暦が誕生したのはユスティニアヌスの時代であるという点や、コンスタンティノス7世が息子のために作ったという『帝国の統治について』の百科全書的な性質が『呂氏春秋』に似通っていること、ビザンツ帝国が周辺諸地域を子ども、兄弟など擬制的親族関係に擬えていたのが宋王朝のそれを連想させることなどが興味深い。 読了日:02月03日 著者:大月 康弘
アテネ 最期の輝き (講談社学術文庫)の感想 デモステネスの生涯を軸に、カイロネイア以後のアテネの社会と民主政の終焉の過程を描く。デモステネスが当事者となった裁判、特にハルパロス裁判が対マケドニア政策といった政治的対立とは無縁の、積年の怨み辛みを晴らす個人的対立の場となっていたというのが面白い。しかし民主政転覆罪を名目とした裁判の頻発が民主政への傾倒の現れだったというのはどうだろうか?文庫版のあとがきで触れられている、アルキメデス・パリンプセストの発見により、デモステネスの弁論に対する評価が変わってきたという話は興味深い。 読了日:02月05日 著者:澤田 典子
技術革新と不平等の1000年史 上の感想 21世紀版『人間不平等起源論』といった趣。レセップスとパナマ運河の下りは西欧版『失敗の本質』という感じだが。農耕の開始から産業革命に至るまで、テクノロジーの発展は庶民を幸せにしないどころか、それ以前より生活を苦しくさせるということが議論されている。19世紀アメリカの綿花栽培にボリシェヴィキ・ロシアの姿を見るという視点や、中国のように(というよりイギリス以外の)一定程度科学が発展していた国でも工業化出来なかったのはなぜかという議論も面白い。 読了日:02月08日 著者:ダロン・アセモグル,サイモン・ジョンソン
世界史のリテラシー 「中国」は、いかにして統一されたか: 始皇帝の六国平定 (教養・文化シリーズ)の感想 伝世文献の記述を中心とした比較的オーソドックスというか教科書的な作りの本。「古典中国」を押し出してる所がこの著者らしいといったところか。これは著者というより「世界史のリテラシー」シリーズ全体のコンセプトでもあるかもしれないが…… 目新しさはないが、特に間違ったことを書いてあるわけでもないので、手堅い内容を求める向きには悪くない本だと思う。 読了日:02月10日 著者:渡邉 義浩
技術革新と不平等の1000年史 下の感想 下巻の射程範囲は20世紀から現代まで。19世紀末から戦後まで経済成長の恩恵が下々にまで及ぼされ、下層階級もそれなりに豊かな生活を送ることができたのは、企業に対する世論の高まりと労働組合などの対抗勢力の活動が活発だったからである。しかしデジタル・テクノロジーの発展、特にAIの登場によりそれも怪しくなってきた……という主旨だと思う。歴史の話と思わせてといて現在、そして未来の話の比重が大きいという作りは『サピエンス全史』と共通している。結論としてはやはり声を上げ続けることが大事ということになるだろうか。 読了日:02月10日 著者:ダロン・アセモグル,サイモン・ジョンソン
老神介護 (角川文庫)の感想 「老神介護」は『折りたたみ北京』収録のものと同じものだと思うが、続編(しかも趣が全く異なる)があるとは思わなかった。「地球大砲」も「彼女の眼を連れて」とは全く趣が異なる続編。本編で描かれている、病気を理由とする人工冬眠という趣向は『三体』でも存在する。本書の中では恐竜と蟻との共生、そしてその破綻を描く「白亜紀往時」を最も面白く読んだ。同じタイトルで出版された単行本はその長編版ということらしく、そのうち読んでみたい。 読了日:02月12日 著者:劉 慈欣
古代西アジアとギリシア 〜前1世紀 (岩波講座 世界歴史 第2巻)の感想 ローマとセットにして西アジア地域と二項対立的に論じられがちだった古代ギリシアを西アジア史の文脈に位置づけたというのが特色ということになるだろうか。山花コラムで触れられている古代エジプトの女王が王朝末期に現れるというのは、日本の女帝と比較すると面白そうである。栗原焦点では古代ギリシアの少年愛について、愛され役の少年が長じて愛し役として成長しないと蔑視の対象となったというのが興味深い。阿部焦点のペルシアとギリシアが互いにどう見ていたのかという話も面白い。 読了日:02月14日 著者:
両京十五日 1: 凶兆 (ハヤカワ・ミステリ)の感想 皇族内の皇位簒奪を狙う者が白蓮教と... |
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