時代力量、議席ゼロで異変 台湾立法委員選
台湾版「三国志」で小政党危機
内紛で分裂、他政党に票流出
台湾総統選挙、立法委員(国会議員に相当=113議席)選挙が13日、投開票され、与党・民進党の頼清徳氏が総統に当選し、立法委員選では第一党が最大野党・国民党(52議席)、第二政党に民進党(51議席)、民衆党は与野党批判の受け皿として8議席を獲得した。民衆党は8年前の若者主導の小政党・時代力量の勢いを吸収し、立法院(国会)で重要法案通過のキャスティングボードを握る立場になっている。
若年無党派、民衆党に集中
与野党以外の受け皿、新軸に
▲2016年、スポーツ大会で記念撮影している左から柯文哲氏、黄国昌氏、林昶佐氏
今回の台湾ダブル選挙結果の特徴は民進党と国民党の二大政党が持つ岩盤支持層以外の無党派中間層の票、その受け皿となる第三の政党がどれほど票を伸ばすかだった。まさに柯文哲党主席率いる民衆党が若年層を中心とした無党派層の支持を得て予想以上の健闘を見せた。台湾はかつての二大政党ではなく、民衆党の柯氏は次回の総統選にも出馬する意欲を示しており、台湾版「三国志」の時代に突入したと言える。
▲台湾立法委員選挙で演説する時代力量の王婉諭党主席
第三政党の躍進の萌芽は、親民党、台湾団結連盟が結成された時もあり、時代力量もそのケース。かつての親民党(宋楚瑜党主席)がやや親中寄りだった以外は台湾団結連盟、時代力量はいずれも台湾独立派で、中国共産党としては、早めに分裂させ、消滅させる工作をする勢力。時代力量の議席ゼロは台湾独立勢力を封じたい中国にとって最大の収穫と見て良いだろう。
▲選挙応援で歌を歌う時代力量の林昶佐氏(中央左)
時代力量は2014年3月の「ひまわり学生運動」で中国とのサービス貿易協定を反対するデモ活動を行い、300人の学生たちが協定阻止のために立法院を占拠した抗議活動で注目を集め、主導したリーダーたちが2015年に立ち上げた小政党。2016年の立法委員選では5議席を獲得し、香港の雨傘運動のリーダーたちとの交流も深く、20〜30代の若者を中心に支持が集まっていた。
▲党の資産条例で徹底して戦う時代力量のメンバーたち(右から林昶佐氏、黄国昌氏)
前回(2020年)の立法委員選で100万票以上を獲得し、立法院で3議席を獲得していたが、今回は小選挙区で3人、比例区で8人が出馬し、「国民党の韓国瑜氏が立法院長になることを絶対阻止」と訴えて得票率は2.57%(前回は7.75%)に留まり、議席数はゼロとなった。
2014年当時、親中融和に傾いていた国民党政権が中国との貿易で台湾が呑み込まれてしまう危機感と台湾を守ろうという情熱にあふれ、若年層だけではなく、幅広い世代でも広がっていた時代力量が、なぜ、衰退し、議席ゼロで敗北したのか。
▲時代力量の基盤を作った黄国昌氏(左)と林昶佐氏(右)
時代力量が政党として発足した当時、党の顔(二代目党主席)となっていた黄国昌氏が20年の立法委選で比例4位で議席が取れず(比例3位まで当選)、大学の講師や中央研究院に入り、日の目を見ずに党内の求心力が失われたことが大きい。党内が党独自路線を目指すグループと与党・民進党と協力を目指すグループ(小緑)の間で内紛が起こり、黄氏が19年2月に党主席を辞任し、民衆党に鞍替えし、同党所属の立法委員候補となった。
▲黄国昌氏(右端)は柯文哲氏(左端)率いる台湾民衆党に鞍替えして立法委員選挙に出馬し当選