|  |  |
| |  | 中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。
| | | 2023-09-01 07:56:32
女ことばってなんなのかしら?: 「性別の美学」の日本語 (河出新書 063)の感想 金水敏『ヴァーチャル日本語』からの流れで読む。著者は実のところ「〜だわ」のような女ことばには否定的ではなく、意思表示の弱い「女性らしい言い回し」を問題とする。欧米言語にもその種の言い回しがあることや、そもそも日本語自体が女性的という指摘が面白い。言い回しの話だけでなく「少女」に対して「少男」という言葉はないというような語彙の問題、更には「女の敵は女」のような論法の問題へと話が広がっていく。日本語学の研究者の議論と比べると深みに欠ける感は否めないが、切り口が面白い。 読了日:08月01日 著者:平野 卿子
自称詞〈僕〉の歴史 (河出新書)の感想 中国から伝来した自称詞「僕」が、江戸時代に儒学的な文脈で身分を超えた友愛の絆を示すものとして使われ、松陰ら幕末の志士が同志との連帯を示す自称詞として頻用したことで、明治以後学校教育などを通じて自称詞として普及していく。しかし学生、知識人などエリートが好んだということで軍隊などでは忌避された。また、使用が男性にほぼ限定されるというジェンダー上の限界もあった。それが現代に入り、新たな展開を迎えていく。歴史学、文学だけでなく社会学的な視点も取り入れた総合的な議論になっている点が評価できる。 読了日:08月04日 著者:友田 健太郎
< 蘭亭序之謎 下 (行舟文庫 GSと 1-2)の感想 上下巻合わせての感想。女探偵の裴玄静とミステリアスなイケメン崔?が互いに騙し合いながら蘭亭序の謎に挑むという筋で、柳宗元、李賀に聶隠娘と、唐後半期、憲宗の時代のオールスター総出演のような雰囲気になっている。弱まる皇権に跋扈する藩鎮と、時代設定もそれなりにうまく生かせている。肝心のオチは「まあ」という感じなのだが、ダヴィンチコードよりは現実的な話になっている。 読了日:08月08日 著者:唐隠
歴史学入門: だれにでもひらかれた14 講の感想 第?部で論文の書き方、史学史など歴史学の基本的な事項を押さえ、第?部でグローバリゼーション、ジェンダーなど個別のテーマについて議論するという構成。科学史の章でピタゴラスの定理などが本当に西洋で発明されたと評価してよいのかという問題を提示したり、帝国主義の章でウクライナ戦争から帝国主義時代の国際社会のあり方を見出したり、個別の議論には注目すべき点が多々ある。しかし特に第?部で古代、中世への言及がほとんどないのが気になる。これでは古い時代を専攻する学生がそのテーマを他人事のように見なすのではないか? 読了日:08月10日 著者:
ゲーセン戦記-ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀 (中公新書ラクレ 797)の感想 ゲーセン経営者の半生とゲーセン業界の内幕。本書で扱われる年代は、私がゲーセンに出入りしなくなった時期の方がずっと長い。あれからゲーセンなんて廃れる一方だとばかり思っていたが、その間にも個別のゲームのブームや試行錯誤が色々あったんだなあと感じた。与信システムやネットワーク対応による課金制など、業界のシステムに関する解説があるのもよい。 読了日:08月12日 著者:池田 稔
巫・占の異相: 東アジアにおける巫・占術の多角的研究の感想 東アジアの古今の巫的存在や占術について。第二章では、鎌倉幕府のような武家政権も公家と同様に怪異を受けて百怪祭のような祭祀を施行しているというのが面白い。第三章では、今までほとんど概説・研究を見たことがない日本中世の風水思想に関する議論がある。沖縄をクローズアップしているのも本書の特徴で、第四章ではユタなど沖縄のシャーマニズムに関する議論がある。ユタ(的な人々)、あるいは横浜中華街の占い師は、彼らがそのような活動を始める経緯を見ていると、台湾で神かがりになるような人と状況が似通っているように感じた。 読了日:08月15日 著者:小南一郎,大形徹,山下克明,上野勝之,平林章仁,豊田裕章,奈良場勝,山里純一,中町泰子,塩月亮子,吉村美香
未完の天才 南方熊楠 (講談社現代新書)の感想 その記憶力について書物を書き写すことで内容を覚えるタイプだったことや、同様に喧伝される語学力の実際、ネイチャーへの投稿論文が基本的に自然科学ではなく科学史や比較文化史に属するものであり、東洋事情のスペシャリストというポジションと見なされていたこと、妖怪の存在を信じていなかったことなど、等身大の熊楠象を描き出す。熊楠のイメージが逆立ちしてもマネの出来なさそうな天才から、努力を重ねれば少しは近づけそうな存在へと変わりそう。 読了日:08月17日 著者:志村 真幸
アートとフェミニズムは誰のもの? (光文社新書 1268)の感想 フェミニズム・アートを題材に、フェミニズムとアートの読み解き方の両方の良い入門書となっている。本論にあたる第3章でフェミニズムの視点から従来のアートやその作者に対する批判を行い、第4章でフェミニズム・アートの実践例を示すという流れとなっている。前衛芸術家たちが従来のジェンダー構造に無批判でそれを温存してしまうというような問題はどの分野でも見られるものだろう。またアートの読み解き方自体は、フェミニズム・アート以外にも応用できそうである。 読了日:08月18日 著者:村上由鶴
遠野物語 全訳注 (講談社学術文庫)の |
|
|
|
| 記事一覧
|
|
|
|  |
 私のお気に入り
|