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  三国志(131) 張飛のはかりごと     
2022-09-14 03:13:01


 玄徳はどう考えたか、王忠の縄を解いて、

 「君の言は、まことに、神妙である。事の成行きから、丞相のお怒りをうけ、征を受けて、やむなくこの徐州を守るものの、玄徳には曹操に敵対する意志はない。君もしばらく、当城にあって、四囲の変化を待ち給え」と、彼を美室に入れて、衣服や酒を与えた。
 王忠を奥に軟禁してしまうと、玄徳はまた近臣を一閣に集めて、
 「誰ぞ、この次に、もうひとりの劉岱を、敵の陣から生捕ってくる智者はないか」と、いった。
 関羽は、雑談的に、
 「やはり家兄のお心はそこにありましたか。実は、王忠と出会った時、よほど一戟のもとに斬って捨てんかと思ったなれど、いやいや或いは兄のご本心は、曹操と和せず戦わず――不戦不和――といったような微妙な方針を抱いておられるのではないかとふと考えつき、わざと手捕りにして持ち帰りましたが」と語って、自分の推測があたっていたか否かを、率直にたずねた。
 すると、玄徳は、会心の笑みをもらして、
 「さなり、さなり! 不戦不和とは、よくわが意中の計を観た。さきに張飛が進んで行こうといったのを止めたのも、張飛の騒がしい性質では、必ず王忠を殺してくるにちがいないとおそれたからである。

 王忠、劉岱のごとき輩を殺したところで、われには何の益もなく、かえって曹操の怒りを煽るのみであるし、もし、生かしておけば、曹操がわれに対する感情もいくらか緩和されてくるであろう」

 そう聞くと、張飛はまた、前へ進み出て、玄徳にいった。
 「わかりました。そうご意中を承れば、こんどは、此方が出向いて、必ず劉岱をひきずり参らん。
どうか此方をおつかわし下さい」
 「参るもよいが、王忠と劉岱とは、相手がちがうぞ」
 「どう違いますか」
 「劉岱は、むかしの刺史であった頃、虎牢関の戦いで、董卓と戦い、董卓をさえ悩ましたほどの者である。決してかろんずる敵ではない。それさえわきまえておるならば行くがよい」
 どうも煮えきらない玄徳の命令である。争気満々たる張飛には、それがもの足らなかった。
「劉岱が虎牢関でよく戦ったことぐらいは、此方とても存じておる。さればとて、何程のことがあろう。即刻、馳せ向って、この張飛が、彼奴をひッ掴んでこれへ持ちきたってご覧に入れます」
 「そちの勇は疑わぬが、そちのさわがしい性情をわしは危ぶむのだ。必ず心して参れよ」
 玄徳の訓戒に、張飛は、むっと腹をたてて、
 「さわがしさわがしと、まるで耳の中の虻か、懐中の蟹みたいに、この張飛をお叱りあるが、もし劉岱を殺して来たら、何とでもいうがいい。いくら兄貴でも主君でも、そう義弟をばかにするものじゃない」と、云いちらして、彼はぷんぷん怒りながら閣外へ出て行った。
 そして、三千の兵を閲して、
 「これから劉岱を生捕りに行くんだ。おれは関羽とちがって軍律は厳しいぞ」
 と、兵卒にまで当りちらした。
 張飛に引率されて行く兵は、敵よりも自分たちの大将に恐れをなした。― 一方、寄手の劉岱も、張飛が攻めてきたと知って、ちぢみ上がったが、
 「柵、塹壕、陣門をかたく守って、決して味方から打って出るな」と、戒めた。
 短兵急に押しよせた張飛も、蓑虫のように出てこない敵には手の下しようもなく、毎日、防寨の下へ行っては、
 「木偶の棒っ。――糞ひり虫。――糞ひることも忘れたのだろ」と、士卒をけしかけて、悪口雑言をいわせたが、何といわれても、敵は防禦の中から首も出さなかった。
 張飛は、持ち前の短気から、業をにやしてきたとみえ、
 「もうよそよそ。このうえは夜討ちだ。こよい二更の頃に、夜討ちをかけて、蛆虫どもを踏みつぶしてくれる。用意用意」と、声あららかに命じ、準備がととのうと、
 「元気をつけておけ」と、昼のうちから士卒に酒を振舞い、彼自身も、したたか呑んだ。

 「景気のいい大将」と、兵隊たちも、酒を呑んでいるうちは、張飛を礼讃していたが、そのうちに、何か気に喰わないことがあったのか、張飛は、咎もないひとりの士卒を、さんざんに打擲したあげく、
 「晩の門出に、軍旗の血祭りにそなえてくれる。あれに見える大木の上にくくり上げておけ」
 と、云いつけた。
 士卒は、泣き叫んで、掌を合わせたがゆるさない。高手小手にいましめられて、大木のうえに、生き礫刑とされてしまった。
 夕方になると、たくさんな鴉がその木に群れてきた。張飛に打ちたたかれて、肉もやぶれ皮も紫いろになっている士卒は、もう死骸に見えるのか、鴉はその顔にとまって、羽ばたきしたり、嘴で眼を突ッついたり、五体も見えないほど真黒にたかってさわいだ。
 「ひィっ……畜生っ」
 悲鳴をあげると、鴉はぱっと逃げた。ぐったり、首を垂れていると、また集まってくる。
 「――助けてくれっ」
 士卒はさけび続けていた。
 すると、夕闇を這って、仲間のひとりが、木に登ってきた。何か、彼の耳もとにささやいてから、縄目を切ってくれた。
 「畜生、この恨みをはらさずにおくものか」
 半死半生の目に会った士卒も、その友を助けた士卒も、抱き合って、恨めしげに張飛の陣地を振向き、闇にまぎれて何処ともなく脱走してしまった。
 陣営のうちで、張飛はまだ酒を飲み続けていた。
 そこへ士卒の一伍長が、あわただしく馳けこんできて、
 「見張りの者の怠りから大失態を演じました。申しわけもございません」
 と、懲罰に処した樹上の士卒が、いつの間にか逃走した由を平蜘蛛のようになり、慄えながら告げた。
 「知っとる知っとる。将としてそれくらいなこと、知らんでどうする……あはははは、それでいいのだ」
 彼は、大杯をあげて、自ら祝すように飲み干し、幕営を出て、星を仰いだ。
 「そろそろ二更の頃だな。――わが三千の兵は三分して各自の行動に移れ。――その一は、間道をしのび、その一は、山を越え、その一は、止まって敵の前面へ向う」
 張飛の命令が伝わると、やがて夜靄のなかに、まず二千の兵が先に、どこかへうごいて行った。
 それは、敵の防寨の背後へまわって忍ぶ潜兵らしかった。
 「まだちと早い。もう一杯飲んでからでいい」
 張飛は、残る三分の一の兵をそこに止めて、なお一刻ほど、酒壺を離さず、時おり、星の移行を測っていた。
 その宵。
 劉岱の防寨のほうでは、早くも、今夜敵の張飛が夜討ちをかけてくるということを知って、ひどく緊張していた。
 「あわてるな。敵の脱走兵の訴えとて、めったに信じるとは危険だ。おれ自身、その兵を取調べてみよう。ここへ其奴を引ッ張ってこい」
 劉岱は、部下の動揺を戒めて、その夕方、密告に馳けこんできたという二人の敵の脱走兵を、自分の前に呼びだした。

 見ると、ひとりはただの士卒だが、もう一名のほうは、手足も傷だらけで、顔は甕のごとくはれあがっている。
 「こら、敵の脱走兵。貴様たちは、張飛から策をうけて、今夜、夜討ちをしかけるなどとあらぬことを密告に来、わが陣地を攪乱せんとたくらんできたにちがいあるまい。そんな甘手にのる劉岱ではないぞ」
 「めっそうもないことを。……手前どもは鬼となっても、張飛のやつを、全滅の憂き目に会わせてくれねばと……死を賭して、ご陣地へ逃げこんで来た者でございます」
 「いったい、なんで張飛に対し、そのように根ぶかい恨みを抱くのか」
 「くわしいことは、先にご家来方まで、申しあげた通りで、そのほかに、仔細はございません」
 「なんの咎もないのに打擲されたあげく、大樹の梢にしばりあげられたというが」
 「へい。あまりといえば、むごい仕方ですから、その返報にと思いまして」
 「……これ。誰かあの脱走兵の訴人を裸体にしてみい」
 劉岱は傍らの者に命じた。
 言下に、訴人の兵は、真っ裸にされた。――見れば、顔や手足ばかりでなく、背にも臂にも、縄目のあとが痣になっていた。そして全身、鼈甲の斑みたいにはれている。
 「……なるほど、詐りでもないらしいが」と、疑いぶかい劉岱も、半分以上、信じてきたが、まだ決しかねて、敵の夜討ちに備える手配も怠っていた。
 すると、果たして。 二更もすこし過ぎた頃、防寨の丸木櫓にのぼっている不寝番が、
 「夜襲らしいぞ」と、警板をたたいた。
 夜霜のうちから潮のような鬨の声が聞えた。と思うと、陣門の前面に、敵が柴をつんで焼き立てる火光がぼっと空に映じた。矢うなりはもう劉岱の身辺にも落ちてきた。
 「しまった! ……敵兵の密訴は嘘でもなかったのだ。それっ、一致して防戦にあたれ」
 あわてふためいた劉岱は、自分も得物を取って、直ちに防ぎに走りだした。張飛の夜襲はまことに張飛らしく、諸所へ火を放ち、矢束を射込み、鼓を鳴らし、鬨の声をあげなどして、派手に押しよせてきた。
 劉岱は、それを見て、
 「彼奴、勇なりといえども、もとより智謀はない男、何ほどのことやあらん」
 とひと跳びの意気で、防戦にあたった。
 劉岱の指揮の下に、全塁の将卒がこぞって駈け向ったので、たちまち、夜襲の敵は撃退され、いかに張飛が「退くなっ」と、声をからしても、総くずれのやむなきに立到り、張飛も柴煙濛々たるなかを、逃げる味方と火に捲かれて、逃げまどっていた。
 「こよいこそ、張飛の首はわが手のもの。寄手の奴ばらは一人も生かして返すな」
 劉岱は、最後の号令を発し、ついに、防寨の城戸をひらいて、どっと追いかけた。
 張飛はそれと見て、
 「しめた。思うつぼに来たぞ」
 にわかに、馬を向け直し、まず劉岱を手捕りにせんと喚きかかった。
 それまで、逃げ足立っていた敵が、案に相違して、張飛と共に、俄然攻勢に転じてきたので、要心深い劉岱は、
 「これは怪訝しい」
 とあわてて、味方の陣門へ引っ返そうとしたところ、時すでに遅かった。
 その夜、正面に来た寄手は、張飛の兵の三分の一にすぎず、三分の二の主隊は、防寨のうしろや側面の山にまわっていたものなので、それが機をみるや一斉になだれこんで来たため、すでに彼の防塁は、彼のものでなくなっていた。
 「計られたか」
 と、うろたえている劉岱を見つけて、張飛は馬を駈け寄せてゆくなり引っ掴んで大地へほうりだし、「さあ、持って帰れ」と、士卒にいいつけた。
すると、防寨の中から、
「その縄尻は、私たちに持たせて下さい」
 と走り出てきた二名の兵卒がある。それは張飛の命に依ってわざと張飛の陣を脱走し、劉岱へこよいの夜襲を密告して、彼らの善処をいとまなくさせた殊勲の二人だった。
 「ゆるす。引っ立てろ」
 張飛は、その二人に縄尻を持たせて、意気揚々ひきあげた。
 残余の敵兵も、あらかた降参したので、防寨は焼き払い、劉岱以下、多くの捕虜を徐州へ引きつれて帰った。