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  三国志(121) 曹操 玄徳を懐柔     
2022-07-06 02:05:29


 雨宿りの間の雑談にすぎないので玄徳に巧みに答えをかわされたが、曹操は腹も立てられなかった。
 玄徳は、すこし先に歩いていたが、よいほどな所で、彼を待ち迎えて、
 「まだ降りそうな雲ですが」「雨もまた趣があっていい。雨情ということばもあるから」
 「今の驟雨で、たいそう青梅の実が落ちましたな」「まるで、詩中の景ではないか」
 曹操は、立ちどまった。
 玄徳も見た。
 後閣に仕える侍女たちが、雨やみを見て、青梅の実を拾いあつめているのである。美姫は手に手に籠をたずさえ、梅の実の数を誇りあっていた。
 「……あ。丞相がおいでになった」
 曹操のすがたを見ると、女院の廂のほうへ、彼女たちは、逃げ散るようにかくれた。曹操は、詩を感じているのか、或いは彼女たちの若さに喜悦しているのだろうか、その鳳眼に笑みをたたえて見送っていたが、――ふと客の玄徳に気づいて、
 「いじらしいものですな、女というものは。あれが生活です」
 「よくあんな美しい侍女ばかりお集めになられましたな。さすがは、都というものでしょうか」
「ははは。しかし、この梅林の梅花がいちどに開いて、芳香を放つ時は、彼女らの美は、影をひそめてしまいますよ。恨むらくは、梅花は散ってしまう」

「美人の美も長くはありません」

  「そう先を考えたら何もかも儚くなる。予は人生の七十年、或いは八十年、人寿の光陰を最大の長さに考えたい。――仏者は、短し短しといい、空間の一瞬というが」
 「お気持はわかります」
 「予は、仏説や君子の説には、無条件で服することができん。性来の叛骨とみえる。しかし、大丈夫のゆく道は、おのずから大丈夫でなくては解し難い」
 と、口をむすんで、運びだす足と共に、いつかまた、前の話題にもどってきた。
 「――どうですか、君。最前も云ったことだが、一体、当今の英雄は誰か。いないのか、いるのか、ご辺の胸中にある人を、云ってみたまえ」
 「その問題ですか。どうも、自分には、これという人も覚えておりません。ただ丞相のご恩顧を感じ、朝廷に仕えておりますが」
 「ご辺の考えで、英雄といい切れる人が見当らぬというなれば、俗聞でもいい、世上の俗間では、どんなことを云っているか、論じ給え」
 性格でもあろうが、実に熱い。そのねばっこい質問には、玄徳もかわしきれなくなった。
 で、遂に、「聞き及ぶところでは、淮南の袁術など、英雄といわれる方でしょうか。兵事に精通し、兵糧は足り、世間ももっぱら称揚しておるようです」 
 聞くと、曹操は笑って、
 「袁術か。あれはもう生きている英雄ではあるまい。塚の中の白骨だ。不日、この曹操がかならず生捕ってみせる」       
 「では、河北の袁紹があげられましょう。家系は四代三公の位にのぼり、門下には有数な官吏が多く出ております。そして今、冀州に虎踞して謀士勇将は数を知らずといわれ、前途の大計は、臆測をゆるしません。まず彼など、時代の英雄とゆるしてもいいのではありますまいか」
 「ははは、そうかな」 曹操は、なお笑って、
 「袁紹は、胆のうすい、決断のない、いわゆる疥癬の輩という人物さ。大事におうては身を惜しみ、小利をみては命も軽んじるという質だ。そんな人間が、いかで時代の英雄たり得ようや」
 誰の名をあげてみても、彼はそういう調子で、真っ向から否定してしまうのだった。否定はするが、曖昧ではない。
 曹操の否定は明快だった。痛烈な快感すら、聞く者の耳におぼえさせる。
 玄徳も、その興味につい誘いこまれた。
 そうして、当今の英雄について、玄徳が名をあげ、曹操が論破し、思わず話に身がいったせいか、いつのまにか酒席の小亭の前に来ていた。
 「ここは風雅だろう、君」 「なるほどよい場所です」
 「観梅の季節には、よくここで宴をひらく。野趣があって甚だいい。きょうもかたい礼儀はやめて、くつろごうではないか」
 「結構です」
 「途々、当今の英雄について大分しゃべってきたが、予にはまだ書生論を闘わした時代の書生気分が抜けていないのか、談論風発は甚だ好むところだ。きょうはひとつ、大いに語ろう」
 彼は胸襟を開いて、赤裸の自己を見せるつもりでいう。
 いかにも自然児らしく、今なお洛陽の一寒生らしくも見える。
 だが、そのどこまでが、ほんとうの曹操か。
 玄徳は、彼の調子にのって、自分の帯紐をといてしまうような風は容易に示さない。
 玄徳が、曹操の程度に自己を脱いで見せれば、それはすっかり自己の全部を露呈してしまうからともいえよう。――玄徳は自分を包むのに細心で周到であった。いや臆病なほどですらある。
 よく取れば、それは玄徳が人間の本性を深く観つめ、自己の短所によく慎み、あくまで他人との融和に気をつけている温容とも心がけともいえるが、悪く解すれば、容易に他人に肚をのぞかせない二重底、三重底の要心ぶかい性格の人ともいえる。

 すくなくも、曹操の人間は、彼よりはずっと簡明である。時おり、感情を表に現わしてみせるだけでも、ある程度の腹中はうかがえる。
 ――が、そうかといって、玄徳は肚ぐろく曹操はより人がよいとも、云いきれない。なぜならば、彼が現わしてみせる感情にも、快活な放言にも、書生肌な胸襟の開放にも、なかなか技巧や機智がはたらいているからである。むしろそれは自分から砕けて相手を油断させる策とも見えないことはない。ただ曹操の場合は本来の性質でするそれと、機智技巧でするそれとを、自分でも意識しないでやっているところがある。だから彼自身は、決して二つのものを、挙止言動に、いちいちつかい分けているなどとは思っていないかもしれない。
 麗玉の酒杯。 美陶の瓶。 そして肴は青い小梅の実。
 さっき梅の実をひろっていた美姫の群れの中で見かけたような美人が、幾人かこれへ来て、ふたりの酒宴に侍していた。
 「ああ、酔うた。梅の実で飲むと、こう酔いが発するものだろうか」
 「わたくしもだいぶ過しました。近頃、かように快くご酒をいただいたことはありません」
 「青梅、酒ヲ煮テ、英雄ヲ論ズ――。さっきから詩の初句だけできているが、後ができない。君、ひとつそれに、あとの詩句をつけてみんか」「できません、所詮」
 「詩は作らんかね」 「どうも生れつき不風流にできているとみえまする」
 「おもしろくない男だなあ、実に君という人物は」 「恐縮です」
 「では、飲む一方とするか。なぜ酒杯を下におかれるか」
 「興も充分に尽しました。もはやお暇を告げたいと存じますから」
 「いかん!」 曹操は自分のさかずきを突きつけて云った。
 「まだ英雄論も語りつくしておらんではないか。――君はさっき、袁術、袁紹のふたりを当世の英雄にあげたが、もうほかに天下に人物なしと心得ておられるか。――借問す! 現代は事実、そんなにも人材が貧困だろうか」
 強いられる酒杯と、向けてくる話題に、玄徳は、むげにも座を立ちかねて、
 「いや、最前あげた名は、世俗の聞きおよびを、申しあげてみたまでに過ぎません」
 と、またつい、さされる一盞をうけてしまった。
 曹操は、矢つぎ早に、
 「俗衆の論でもいい、袁紹、袁術のほかには、誰がもっぱら、当今の英雄と擬せられているか」
 「次には、荊州の劉表でしょうか」
 「劉表」           
 「威は九州を鎮めて、八俊と呼ばれ、領治にも見るべきものがあるとか、聞き及んでいますが」
 「だめ、だめ、領治など、彼の部下のちょっぴり小利巧なやつがやっているに過ぎん。劉表の短所は、なんといっても、酒色に溺れやすいことだ。呂布と共通なところがある。なんで時代の英雄たるを得よう」
 「では、荊州の孫策は」「ムム、孫策か」
 曹操は、笑い飛ばさなかった。ちょっと、小首をかしげている。

 丞相のお眼には、孫策をどうご覧になられていますか。彼は江東の領袖、しかも弱冠、領民からも、小覇王とよばれて、信頼されておるようですが」
 「いうに足るまい。奇略、一時の功を奏しても、もともと、父の盛名という遺産をうけて立った黄口の小児」 「では、益州の劉璋は」 「あんな者は、門を守る犬だ」
 「しからば張繍、張魯、韓遂などの人々はいかがですか。彼らもみな英雄とはいえませんか」
 「あははは。ないものだな、まったく」 手をうって、曹操はあざ笑った。
 「それらはみな碌々たる小人のみで論ずるにも足らん。せめてもう少し、人間らしい恰好をしたのはおらんかね」「もうその余には、わたくしの聞き及びはありません」
 「情けないことかな、それ英雄とは、大志を抱き、万計の妙を蔵し、行って怯まず、時潮におくれず、宇宙の気宇、天地の理を体得して、万民の指揮にのぞむものでなければならん」
 「今の世に、誰かよく、そんな資質を備えた人物がおりましょう。無理なお求めです」
 「いや、ある!」
 曹操はいきなり指をもって、玄徳の顔を指さし、またその指を返して、自分の鼻をさした。
 「君と、予とだ。今、天下の英雄たり得るものは大言ではないが、予と足下の二人しかあるまい」 そのことばも終らないうちであった。(121話)

― 次週へ続く―

 

 

 

 

 

 

 


 
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